
どうもこんにちは。戦術トレードラボのラボ長です。
第7話では、大事にしてきた本線を、いつでも戻れるように保存して、いったん止めた話を書きました。
今回は、本線を止めたあとに始めた「番外編」の話です。
名前のとおり、ちょっとした寄り道のつもりでした。
ところがこの寄り道が、のちに本線に代わって、いまの私のEAの元になります。
私は非エンジニアの兼業トレーダーで、AIエージェントのClaude Codeと一緒に、自分の手法をMT4のEAにしています。いわゆるEA自作、FX自動売買の開発記録です。
今回は、チャートパターンでEAを作ってみたい方に、とくに読んでほしい回です。
ここで私が気づいたのは、形の見分け方よりも大事なことが、形の外側にあった、ということでした。
本線を止めて、「天井・底の形」で試してみる
本線は、高値と安値の切り上げ・切り下げでトレンドの転換を判定して、そこで入るEAでした。第3話から第7話まで、ずっと私の目に合わせようとしてきたものです。
番外編で見ることにしたのは、チャートの天井や底にできる、よくある形です。
トレードをしている方なら、一度は「これ、天井っぽいな」と感じたことがある、あの形。
形の名前や、どこで入ってどこで出るかの決まりは、手法そのものに関わるので伏せさせてください。
最初は、私が言葉で伝えたルールを、AIがそのままプログラムにしました。
AIは形を探して売買させ、結果と一緒に、売買した場所を描いたチャート帳を出してくれます。
結果は、勝つ回数は多いのに、合計するとほぼトントン(バックテスト・過去データ)。
そして帳面をめくっていくと、すぐに引っかかるページが出てきました。
「これ、天井の形に見えてません」
AIが「天井の形」として見つけてきた場面の中に、下がっている途中にできたものが混じっていたんです。
形だけを見れば、たしかに似ています。
でも、私の目には、どうしても天井に見えない。
「これ、天井の形に見えてません。上がってきたところじゃないと」
天井は、上がってきた先にあるから天井です。
下がっている途中にできたものは、形が似ていても、私の見ている「天井」とは別物です。
振り返ると、私は形を形だけで見ていたわけではありませんでした。
その形の前に、どんな流れがあったのか。どんな流れの中で、その形ができたのか。
そこまで含めて、一瞬で「天井っぽい」と判断していたんです。
第3話で「人の目は、どこを無視するかまで含めて判断している」と書きましたが、今回もまた同じ種類の壁でした。
人の目は、形の前後の流れまで一緒に見ている。機械は、言われなければ形しか見ない。
AIには、形の前の流れまで確かめるように直してもらいました。
「番号振ってくれたら、言える」
本線のときと同じように、番外編でも帳面を見ながら、AIと○×のやりとりをしていきます。
ただ今回は、私のほうから、もう一歩ふみこんだお願いをしました。
「番号振ってくれたら、山の頂点と損切・利確を言える」
AIは、帳面の高値と安値のひとつひとつ、そしてトレードの1件ずつに番号を振ってくれました。
これで「ここは違う」だけでなく、私が入りたい場面を、「この番号が頂点で、損切りはここ、利確はここ」と丸ごと伝えられるようになります。
AIはそれを読み取ってルールを直し、直した帳面がまた届く。私はそれを見て、また番号で返す。
「(21)、(22)、(24)、ちゃう」
こんな返事を何周か繰り返すうちに、私が×を付けた場面は、帳面からほとんど消えていきました。
本線のときは、何度言っても、私の目と機械の判定がそろいませんでした。
それが番外編では、返事をするたびに、少しずつ近づいていく。
私はAIに、こう伝えています。
「この方向で見る方が可能性ありそう」
AIの返事を要約すると、こうでした。
目と判定が近づいてきたことは、続ける理由になる。ただ、数字はまだトントン。決めるのは手応えではなく、ほかの期間でも同じ結果が出るかどうか。
実際、○×に合わせてルールを直すたびに、調整できるところも増えていきました。
AIの記録には、「調整どころが、ラボ長の○×の数では決めきれないくらいに増えている」という意味のことまで書かれています。
目に合わせるほど、ルールは「私が見た期間」にぴったりになっていく。それはそれで、危ういことでした。
「よくならない最大の原因、なんだと思う?」
形の見分け方は、だんだん私の目に近づいていく。
それなのに、1回のトレードあたりの成績は、ほとんど良くなりませんでした(バックテスト・過去データ)。
何を直しても、そこから動かない。
私はAIに聞きました。
「よくならない最大の原因なんだと思う?帳面を目で見て、真問題を確認して」
AIは帳面を何ページも自分の目で見て、さらに、エントリーしたあとの値動きをまとめて調べてくれました。
返ってきた答えは、こうです。
原因は、形の見分け方ではない。入る場所でもない。損切りと利確の釣り合いだ。
損切りは、形の外側に置きます。形が崩れたらそこで負け、というところに置くのが、私のやり方です。
そうすると、負けたときに失う幅は、どうしても大きくなる。
それに対して、勝ったときに取れている幅が、小さすぎたんです。
それなら、もっと早く入って、損切りを小さくすればいいのでは。
そう思って、入る場所を変える案もいくつか試してもらいました。
結果は、どれもダメ。損切りを小さくしたぶん、エントリーのあとの揺り戻しで振り落とされるだけでした。
数字が上がったのは、ただひとつ。勝ったトレードを、もっと伸ばしたときだけ。
それも、伸ばしすぎると、今度は減っていきます。
ずっと「どこで入るか」ばかり直してきたのに、効いていたのは「どこで出るか」でした。
第7話で、裁量のころの私が、まだ形は崩れていないのに値動きに耐えきれずに手仕舞いしていた話を書きました。
思えば、あのときの悩みも、入る場所ではなく出る場所の話だったんです。
「確実に利益を残していこう」
出口の話になって、私はもうひとつ気になっていたことをAIにぶつけました。
「1件あたりのプラスRが小さすぎる。固定ロットで見たい」
Rというのは、損切り1回分の損を「1」として数える物差しです。
その物差しで見ると、1回あたりのプラスが、どうにも薄い。
固定ロットで見直してもらうと、薄く見える理由が分かりました。
勝つときは、負けの何倍も取れている。ただ、ある程度伸びたところで建値に逃がしたあと、そのまま戻されてプラスマイナスゼロで終わるトレードが、かなりの数あったんです。
せっかく伸びかけたのに、ゼロで終わる。
そこで私が出した方針が、これです。
「確実に利益を残していこう」
ポジションをいくつかに分けて入り、伸びたところで少しずつ利確していく。途中で、損切りを建値に移す。
どう分けて、いつ建値に移すかは、まずAIのおすすめに任せました。
分け方は、綱引きだった
ここからが、思っていた以上に奥の深いところでした。
- 1つ目の利確を、もっと早くしたら?
- 建値に移すタイミングを変えたら?
- 分ける数を増やしたら?
私の思いつきを、AIが1つずつバックテスト(過去データ)で確かめていきます。
そして、どの案を試しても、同じことが起きました。
プラスで終わるトレードを増やすと、合計の利益が減る。
合計の利益を増やすと、プラスで終わるトレードが減る。
早めに利確すれば、プラスで終わる回数は増えます。でもそのぶん、大きく伸びるはずだった分を手放してしまう。
早めに建値に逃がせば、エントリーのあとにいったん戻ってくる値動きに引っかかって、そのあとの伸びを逃してしまう。
AIの記録の言葉を借りると、「分け方をどう変えても、2つのあいだでお金が移るだけ」でした。
最後は、合計をほんの少しだけ譲って、プラスで終わるトレードを増やす形に落ち着きました。
これは、私が出した案が、そのまま採用になったものです。
「確実に利益を残す」ほうを選んだ、ということになります。
「1ページ目の(2)が損切で終わるのが納得いかない」
分け方が決まっても、帳面には、どうしても納得できないトレードがありました。
帳面の1ページ目、(2)番のトレード。
エントリーのあと、しっかり利益が乗った。建値に逃がす手前、あとほんの少しのところまで伸びた。
そこから戻されて、最後は最初に置いた損切りで終わっている。
「1ページ目の(2)が損切で終わるのが納得いかない」
AIは、この(2)のように「しばらく利益が乗っていたのに、元の損切りまで戻されるトレード」を救う仕組みを試してくれました。
(2)は、救えました。
そして、別のところで、ほぼ同じだけ損をしていました。
(2)を救う仕組みは、そのあと大きく伸びるはずだったトレードまで、途中で建値で止めてしまっていたんです。プラスで終わるトレードの割合も、ほとんど変わりませんでした。
この仕組みは、いまのところ標準では入れていません。
第6話で、「1つのトレードを直そうとすると、別のトレードが消える」と書きました。
形を変えても、同じことが起きる。
目の前の1回を救うルールは、見えていないどこかの1回を犠牲にしている。
「納得いかない」は、トレーダーとしての正直な気持ちです。
でも、1回を救うかどうかは、気持ちではなく、全体の数字で決めるしかありませんでした。
今回わかったこと
チャートパターンでEAを作ろうとしている方に向けて、今回の学びをまとめます。
- 人の目は、形だけでなく「前後の流れ」も見ている
形だけを探させると、機械は下がっている途中の似た形まで拾ってきます。その形がどんな流れの中にあるかまで、言葉にして伝える必要がありました。 - 「違う」だけでなく、「私ならここ」を番号で伝える
帳面の高値・安値とトレードに番号を振ってもらうと、入りたい場面を、頂点・損切り・利確まで丸ごと伝えられます。 - 目に近づいても、続けるかどうかは「再現するか」で決める
○×に合わせてルールを直すほど、調整どころは増えていきます。手応えがあるときほど、ほかの期間で確かめる。 - よくならないときは、入る場所より出る場所を疑う
形の見分け方と入る場所ばかり直していた私の場合、本当の原因は、損切りと利確の釣り合いでした。 - 分割と建値は、「回数」と「合計」の綱引き
プラスで終わる回数を増やせば合計が減り、合計を増やせばプラスで終わる回数が減る。1回を救う仕組みは、どこかの1回を犠牲にします。
目に合わせてルールを細かくしていく危うさは過剰最適化(カーブフィッティング)とは?に、勝率やPFなど成績の見方はEAの成績の見方にまとめています。
次回は、ここから先の話です。
「確実に利益を残す」形は決まりました。それでも、バックテスト(過去データ)のドローダウンを見た私は、AIにこう言っています。
「ドローダウン厳しい。3通貨もアレ。あと何が残ってる」
次回は、その先で私が、自分の目そのものを試した話です。
結果を隠したチャートで「入る」「見送る」を決めてみたら――。
このころのEAの成績
今回は、成績スコアの新しい記録はありません。いまの成績スコアは 1.25(第6話「1つずつ作り直した(1年)」)のままです。詳しい数字は第6話の最後にあります。
関連: ラボ長のEA開発ストーリー / 裁量をルールにする / Claude CodeでEAを作る
連載: 第1話 / 第2話 / 第3話 / 第4話 / 第5話 / 第6話 / 第7話
あわせて読みたい: AIでEAを自作する前に知っておきたい5つのこと
※本ブログの成績はすべて私個人の記録であり、将来の利益を保証するものではありません。バックテストの結果は過去のデータによるものです。投資は自己責任でお願いします。


コメント